ミミズは、蚯蚓という字を教えてもらって甚く気に入った。それをミミズ文字で表したいと願った。
「ミミズ」は、多くのミミズがすぐに覚えた。ミミズは名前を表示できたことに満足した。
だが、「蚯蚓」は勝手が違う。まず、匹数が要る。あまりミミズ付き合いが得意でないミミズだ。多数のミミズが協力するのは難しかった。
そもそも、何匹必要なのか、数えるのも難しかった。ミミズは11までは辛うじて数えられたので「ミミズ」ができたのだ。11以上はよくわからない。「蚯蚓」を教えてくれた人間に聞きに行くが、帰ってくる頃には忘れた。
立夏。今年もミミズは蚯蚓が出来ない。