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2020年1月12日日曜日

御神籤/五十嵐彪太

 初詣でおみくじを引くのは久しぶりだった。最近はおみくじもデジタル化している。電子マネーで100円。スマホでピッとするとパッと画面におみくじが現れた。風情もありがたみもないな……と思ったが、あたりを見回すと老いも若きも熱心に画面上のおみくじを読み込んでいるようだ。
 改めて、画面に目を落とす。「並」? 
「待ち人 来るかもしれない来ないかもしれない」
「失せ物 出るかもしれない出ないかもしれない」
「学問 とりあえず勉強はしたほうがよいだろう」
 頼りなく意味のない文面のおみくじである。皆どうしてこんなのを熱心に読んでいるのだろう。
 一通り読み終わると「結びますか」と画面に出た。「はい」を選ぶと、画面操作でおみくじを疑似的に畳み、結び目を作るように促される。なかなか難しい。悔しいのでムキになってしまう。ああ、皆これをやっていたんだなと合点した。
 やっと結び終わる。
「48秒 中吉」
「もう一度引きますか」

御神籤/立花腑楽

 神域の闇に、静とした風が流れている。
 弱々しいが、それは確かに羽ばたきの風圧だ。
 するすると枝からほどけた御神籤たちが、夜空に旅立っていく。
 小さな紙片もあれだけ集まれば、それなりの重量だったのだろう。丸裸になった神木たちは、どことなく清々として見えた。
「大群が西に飛んだぞ。護界ヶ森に渡る気だ。おい、子組は鷹を出せ。丑組と寅組は走って追うんだよ。万事手筈通りだ」
 神職に雇われた回収業者たちが一斉に動き出す。途端に、異形どもの気配が年始の寒夜に満ちていく。
 恒例の御籤追い神事が、今年も始まる。