神域の闇に、静とした風が流れている。
弱々しいが、それは確かに羽ばたきの風圧だ。
するすると枝からほどけた御神籤たちが、夜空に旅立っていく。
小さな紙片もあれだけ集まれば、それなりの重量だったのだろう。丸裸になった神木たちは、どことなく清々として見えた。
「大群が西に飛んだぞ。護界ヶ森に渡る気だ。おい、子組は鷹を出せ。丑組と寅組は走って追うんだよ。万事手筈通りだ」
神職に雇われた回収業者たちが一斉に動き出す。途端に、異形どもの気配が年始の寒夜に満ちていく。
恒例の御籤追い神事が、今年も始まる。