あまり知られていないことだが、サンタクロースは毎年変わる。あまりにも激務だからだ。それでも「一生に一度はサンタクロースをやりたい」という者は多い。
各種適性検査、試験、面接を潜り抜けたサンタ候補は、サンタクロースにふさわしい能力や資質を持ち合わせている素晴らしい人物だ。
宇宙飛行士に匹敵する狭き門になったのには理由がある。今からざっと……まあ、やめておこう。ちょっと昔の話だ。
つまり、ある年のサンタクロースが不逞な野郎だったのだ。
酒を飲む、トナカイをからかう、プレゼントを開ける、子供に見つかる、ママとキスする、夜明けまでにプレゼントを配り終わらない。またママとキスする……とんでもない悪行サンタだった。
さて、今年のサンタクロース試験だが、試験官が、あの不逞サンタクロースと遊んだ子供たちなのだ。彼らは大人になった。クリスマスの秘密はもうよく知っている。そして、彼らに、あの年の不逞サンタクロースは伝説的人気を誇っているのだ。
おそらく、今年選ばれるサンタクロースは、キスするどころじゃないだろう。