漢字を覚え始めたばかりの子が画用紙に林の字をさらに並べて大きく書いた。
林林
「理義字をさらに重ねたらリギリギジだな」と言う。
「リギリギジ?」と子が言う。
するとグラリと視界が揺れ、我々は鬱蒼とした林の中にいるのだった。変わったことと言えば、きっちり同じ形の樹木が二本ずつ並んで立っていることだった。
子が「火火火火」と書く。
「火は上下に重ねるんだ」
「炎」と改めると、更に「燚」に書き替えた。
「リギリギジ!」
二本組の樹木が次々と綺麗に燃え上がっていく。しまった、森林火災だ。
淼の字はリギリギジとは認められなかったようだ。単なる理義字か品字様だということだろう。苦し紛れに雨を幾つ並べて書くが、何も起きない。
ついに画用紙が燃え始めたが、子は磊磊落落、ケタケタ笑っている。