俺みたいな風説士は食っていけない世になった。風説の流布が禁止されたからだ。
かつての馴染み客に駄法螺を密売して糊口を凌いでいたが、最近は自棄になって「こんな世界終わっちまうよ」としか騙っていない。
客はうんざり顔で「また同じネタかよ」と文句を言うが、代金はきっちり払ってくれる。
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一次選考通過
俺みたいな風説士は食っていけない世になった。風説の流布が禁止されたからだ。
かつての馴染み客に駄法螺を密売して糊口を凌いでいたが、最近は自棄になって「こんな世界終わっちまうよ」としか騙っていない。
客はうんざり顔で「また同じネタかよ」と文句を言うが、代金はきっちり払ってくれる。
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一次選考通過
サンキュとだけ言って、体育館に戻っていった。
慌てて呟いた「安静にしなきゃ」は、彼の背に追いつけなかった。
半分に切った湿布を手に、西日差す保健室に取り残される。じわじわ蝉が鳴く。あの青痣は確かこのあたりだったろうか。自分にも湿布の片割れを貼り付ける。冷たくて、ひゃっと声が出た。
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一次選考通過
眠れなくて祖母の部屋に行く。彼女は魔女なので夜更かしなのだ。
「毛布をしばらく窓の外に掛けておくといい。月光浴が不十分で眠りの力が弱まってるのさ」
そんなおまじないより、一緒に寝て欲しいと訴える。
「いいから言う通りにやってみな。小さな魔女さん」
偉大な師匠は私の額にキスをする。
水割りを作りながら「あたし昔は天女だったの」とママが言った。天人五衰の兆しがあり、それで潔く天界を飛び出してきたらしい。
酔客の一人が「羽衣着て店に立ちなよ」と茶化す。
「いやよ、年甲斐もなく浮かび上がったらどうすんのさ」
ママも客たちもけらけら笑い、儚い人界の一夜が更けていく。
空飛ぶ赤いおじさん。その共通点から愛息はサンタクロースと天狗を混同しているらしい。
私は懇々と説明し、彼の脳内の「聖夜にプレゼントをくれるおじさん」概念から天狗を分離させることに成功した。
すると今度は「じゃあ天狗はいつ何をくれるおじさんなのさ」という新たな疑問を突きつけられた。
天竺鼠が抹香臭い話ばかりするので、隣の檻の金絲猴はすっかり感化されてしまった。
さすが天竺からいらした鼠様だと心酔しているが、生憎彼は南米の生まれだ。
さらに隣の檻では、同郷同属のカピバラが「ぼくの和名が鬼天竺鼠だと知ったら、金絲猴くん、どんな顔するかな」と草を食み食み考えている。
冬の陽光は天窓でトリミングされ、部屋の一画にきっかり真四角の聖域を落としている。
そこに神殿を作ろうと、異国の菓子箱、アラビア詩集――あるだけのお気に入りを積み上げる。ところが、志半ばでその神殿は崩落した。神の怒りを被ったのだ。
奪還した陽光を浴びながら、怒れる神はにゃあんと吼える。