2024年10月31日木曜日

#秋の星々140字小説コンテスト 「長」投稿作/立花腑楽 

 巫女の舌は長く伸び、気圏の高みにまで至る。希薄で透き通った大気中のエーテルの味が、彼女の味蕾に神意を授ける。
ある時、天から帰還した舌を迎えた巫女が、「異なものを舐めた」と妙な託宣を下した。
司祭たちが頭上を仰ぐ。遥天の彼方から、これまた長い舌が一本、垂れ下がってくるのが見えた。

2024年10月30日水曜日

#秋の星々140字小説コンテスト 「長」投稿作/立花腑楽 

 御厨子の中に、異形の即身仏がある。矮躯に載った頭蓋が、異様に縦に長い。
「福禄寿の仏さんやと、檀家たちは有難がっとりますが」と管理者の住職は言った。
「この外法頭、実はいまだに伸びよるんですよ」
声を潜めながら御厨子を揺すると、その長頭からひどく生々しい水音がぼちゃぼちゃ響いた。

2024年10月29日火曜日

#秋の星々140字小説コンテスト 「長」投稿作/立花腑楽

夕陽を背に帰路に着く。私のシルエットが、茜色のアスファルトに長い影を落としている。 その影はぐんぐんと伸び、やがて伸び切ったゴムのように、ばちんと足元からちぎれてしまった。 影が飛び去った先に、夜が大きな口を開けている。私の影を吸い込み、ぶるりと膨張して、迫りくる夕陽に威を示す。