森星霜
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2020年6月20日土曜日
インクが乾かない/五十嵐彪太
短い手紙を書いた。
インクが乾いたら、送ろう。
インクが乾いたら、封筒に入れよう。
インクが乾いたら、切手を貼って、郵便局に行こう。
出す勇気がなかなか出ないから、「インクが乾いたら」を言い訳にグズグズしているが、もう一ヶ月もインクが乾かない。乾いているか確かめるため、指でちょっと触った跡があちこちにできて、便箋が汚れていく。
こんな手紙がもう何枚も溜まってしまった。部屋中が生乾きの手紙で足の踏み場もない。
インクが乾かない/立花腑楽
日記を書くときはいつも泣いてる気がする。
ノートに落ちた涙がインクを滲ませる。
水を得た魚のように、文字たちが涙に泳ぐ。
そのたびに記載内容はぐにゃぐにゃと改竄され、曖昧な記憶もそれに寄り添う。
ことに、最近の日記帳はいつもびしょびしょで、インクが乾く暇もない。
昨晩の日記によると、私はあなた以外の男に抱かれたらしい。
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