2020年6月20日土曜日

インクが乾かない/立花腑楽

 日記を書くときはいつも泣いてる気がする。
 ノートに落ちた涙がインクを滲ませる。
 水を得た魚のように、文字たちが涙に泳ぐ。
 そのたびに記載内容はぐにゃぐにゃと改竄され、曖昧な記憶もそれに寄り添う。
 ことに、最近の日記帳はいつもびしょびしょで、インクが乾く暇もない。
 昨晩の日記によると、私はあなた以外の男に抱かれたらしい。