両親の口論が熱を帯びてきた。いつものように船底弁を開き、不可視の海水を受け入れる。バラストタンクの重量を抱きしめ、私はリビングの隅にひっそりと沈降する。青暗い無音世界。深海鮫になった両親が、ぱくぱく鰓を動かしている。「浮上したい」と「沈んでいたい」が同質量で圧縮された私の深海。
座礁船に添い寝する。擱座痕を撫ぜてやると、まだ痛むのか、くぅくぅと鳴いた。横抱きして、たっぷり乳を飲ませてやる。「次も船がいい? 鯨はいかが?」「蟹がいいです。浅瀬暮らしも悪くなさそうだ」蟹ね、わかったわ。私は笑って、きつく小さく、その船を抱きしめた。