2024年5月19日日曜日

言葉の舟 140字小説コンテスト(未投稿作)/立花腑楽

両親の口論が熱を帯びてきた。いつものように船底弁を開き、不可視の海水を受け入れる。バラストタンクの重量を抱きしめ、私はリビングの隅にひっそりと沈降する。青暗い無音世界。深海鮫になった両親が、ぱくぱく鰓を動かしている。「浮上したい」と「沈んでいたい」が同質量で圧縮された私の深海。