2019年6月6日木曜日

虚空健康法/五十嵐彪太

 静かである。早朝の公園で体操を開始して十分程経過したはずだが、荒い息は聞こえない。
 人気のない朝の公園。空気は涼しく澄んでいて、新緑が濃い。実に身体によさそうである。
 息が上がっていないわけではない。この静寂に吸い取られてしまっているのだろう。それくらい朝の公園は静かだ。
 軽く公園内をジョギングをする。静かだ。足音がしないのだ。音だけでなく地面の感触も薄れていく。タイムは悪くない。
 走り終わったら、念入りにストレッチだ。寝転んだり、捻ったり。大地の感触が希薄で、どうも力が入れにくいが、心地はよい。木々の緑が滲んでいく。朝の空の青と木々の緑の境界が曖昧になっていく。十五分はしっかりやろうと思ったが、時計が止まってしまった。
 大の字に寝っ転がった。上も下も、右も左も、虚しい空が広がっている。なんだかとても健康になった気がする。