2020年9月5日土曜日

時刻不詳/立花腑楽

 その街の時鐘が鳴らなかったのはのは、たったの一日だけだった。
 それは、時計塔の管理人がお嫁さんを迎えた日だった。
 街の人たちは、その日だけは時間なんて存在しないものとして過ごした。
 その後、時刻不詳の一日から復帰できない人々もいくらか居たわけで。
 そのことを言われるたび、時計塔の管理人は申し訳なさそうに頭を掻いた。