分娩されぬまま葬られた物語は、創作者の魂から切り離さないといけない。
幽世に持っていくには、物語というやつはノイズが多すぎるのだ。
死者たちの魂に、まるで腫瘍みたいにくっついてる物語を刈り取るのも、我ら死神の仕事である。
刈り取られた物語は、まとめて偽書編纂所に送られる。
改竄、裁断、融解、整形――様々な過程を経て、蛭児みたいに不完全だった物語たちは統合され、いっぱしの偽書となる。
語られることのなかった物語、そして、いつしか語られるかもしれない物語の掌編集だ。
さて、これから先は、我ら死神ではなく、産土神の領分である。
新たな生命とともに偽書を授かる赤子たちよ、健やかにあれ。