2022年4月24日日曜日

青い鳥居/五十嵐彪太

 南の島に二つの神社がある。
 ひとつは海神様、もうひとつは空神様を祀っている。
 鳥居はそれぞれの神様こだわりのブルーで七年に一度塗り替えられる。
 塗料の調合は神様手ずから行われ、海神様は緑がかったラグーンブルー、空神様はそれよりすこし青が強いセルリアンブルーがお好みだ。
 だが、去年の塗り替えで海神社の鳥居と空神社の鳥居がそっくり同じ青になってしまった。「ちょっと趣向を変えて」と思ったら同じコバルトブルーになってしまったのだ。
 海神社の鳥居と空神社の鳥居は形が少し違うのだが、同じ色になったことで神様は頻繁に帰る神社を間違えるようになった。しばしば鉢合わせするようになった神様たちに島民はやきもきした。小さな島の神様同士がケンカでもしたら困るのは島民だ。
 だが島民の心配をよそに、神様たちは大いに交流を楽しんでいるようだ。
「当神社の青の宝物を海神様にもご覧いただき、御歓談に翡翠葛が咲いた」と、空神社の宮司は談話を発表した。