2022年4月24日日曜日

青い鳥居/立花腑楽

 暗い森の奥を目指して鳥居が幾重にも続いており、それらが不思議と青いのだ。
「ネオン糖でできているのです。舐めると涼やかな甘みがありますよ」
 禰宜はそう説明しながら、深奥へと私を誘う。
「赤い鳥居もいくつかありますね」
「それらはもう古くて劣化したものです。抜いてしまわないといけない」
 そんな会話を交わしながら、いくつもいくつも鳥居をくぐった。
 青、青、青、赤、青、青、赤、青、青……。
 暗い参道を歩けど歩けど、目的の社は見えてこない。森の胎内に分け入っている気分になる。
「お疲れですか。それなら、少し休みましょう」
 禰宜は腰を下ろし、傍らの鳥居をやたら長い舌でべろべろ舐めはじめた。
 私は興味本位で赤い方の鳥居を舐めてみたが、これがまったく舌が焼けるような酷い味で、
「ああ、あなた、何をなさっているのです」
 禰宜がひどく狼狽した口調で静止するものだから、私も何かとんでもないことをしでかしたような気になり、心臓が口から飛び出すほど跳ねるのを感じた。