電子部品メーカー最大手であるサイバーエモーション社(SE社)の経営破綻は、アンドロイド業界に大きな波紋を投じた。
人間と寸分違わぬ繊細な感情演算には、SE社が誇る人工感情チップセット「嗜好回路」が不可欠とされている。
SE社による「嗜好回路」の開発は、貧弱だったアンドロイドの感情(特に好悪表現)に「嗜好」というランダム要素を盛り込むことで、アンドロイドと人間との距離を一気に縮めた技術革新であった。
そのSE社が消滅することで、「嗜好回路」の供給も今後は途絶える。業界人の動揺、推して知るべしである。
そうなると注目されるのは、これまで業界二番手に甘んじていたギークコミュニケーションズ社(GC社)の動向だ。
GC社はSE社に追随し、「嗜好回路」の廉価版とも呼べるチップセット製造を行っていたことから、今後、SE社の後釜に据わることは確実視されている。
しかし、GC社のチップセットを搭載したアンドロイドについては、「食事のことでいつも喧嘩になる」「性的なプレイが特殊過ぎて、ついていけない」等と、一部ユーザからそのピーキー過ぎる特性を問題視する声も上がっている。