2019年8月22日木曜日

夢獣/立花腑楽

 微睡ヶ原のそこかしこで、夢獣たちが牧草を食んでいる。
 正確には獣偏に「夢」と書くが、その読み方は誰も知らない。故に、ひとまずは夢獣と呼称している。
 ここ最近、夢獣は増え過ぎなのだという。
「不眠症の時代だからね。供給過多なんだよ」
 微睡ヶ原の管理人がそう教えてくれた。二匹の夢獣をその両手にむんずと掴んでいる。
「ああ、間引くんだ。可哀そうだけどね」
 微睡ヶ原にも夜の帳が降りようとしていた。
 陰惨な夕焼けを背負いながら、ぼくは今宵を共にする夢獣の一匹をそっと抱き寄せる。