ある夜、私は箪笥に仕舞われた靴下達が話す声を聞いてしまった。
靴下は靴下なので、話は上手くなく、要領を得ず、しどろもどろだったが、つまり、私の悪口なのだった。
曰く、依怙贔屓する(履いてない靴下がたくさんあった)、左の親指の爪がいつも長くて痛い、裏返しのまま仕舞うな、ペアを間違えるな。
まったくもってその通り。私はこれまでの靴下達に対する非礼を詫びるために、箪笥の抽斗を開けた。すると話を聞かれていると思っていなかったらしい靴下達は驚いて、飛び出してしまった。
部屋中に散らばって落っこちた靴下達は、みるみるうちに毛玉だらけになった。
ああ、どうやって靴下に謝ればいいのだろう。
私は毛玉だらけになった靴下達を拾い集め、「ごめんよ」と繰り言のように言いながら泣いた。抱えきれないほどの靴下で、涙を拭う。
どうやら洗いもせずに箪笥に入れてしまった靴下が幾つもあるようで、とても臭かった。靴下に対する仕打ちをこれ以上なく実感したのだった。