2019年10月21日月曜日

虹色の傷/立花腑楽

 生白い肌膚を切り開く。
 溢れるのは血潮ではなく、虹色の光彩。
「相変わらずイカれた眺めだな。だが奇麗だ」
 思ったことがそのまま口に出てしまった。
 メスを手にしたまま、しばしその輝きに酔いしれる。
「そのような不躾な眺め様、神罰を蒙りますぞ」
「そんな霞がかったような口調で叱られてもなぁ」
 俺はぐいっと傷口を押し開くと、存分に不躾な視線を送り込む。
「オーケー。いい塩梅だ。あんたの神様は順調にお育ちあそばされてるよ」
 視界がさっと遮られた。
 袴で傷口を隠したまま、螺鈿の巫女が俺をきっと睨んでいる。