「鎖骨を穿いてみないか?」
と、友が言う。何を言っているかわからない。が、友の顔は、見たこともないくらい真剣で、深刻で……そして少々色気があった。
「穿くって、どうやって?」
つい、そう言ってしまった。
「鎖骨を抜いて、穿くんだ」
「穿けるのか?」
「ああ、穿ける」
「誰の鎖骨を抜くんだ?」
「そりゃあ……オレの鎖骨だ。他にいるか? おまえ、鎖骨の抜き方、知らないだろう?」
そう言うと、友はゆっくりと裸になってから、服を脱ぐような手つきで鎖骨を抜いた。鎖骨を抜いた友は、まるっきり身体に力が入らないようで、くたっとソファーに横たわり、潤んだ瞳で鎖骨をこちらに差し出した。
「これが穿く鎖骨だ。さあ、穿いてくれ」
血と粘液が少し付着しているが、白くて温かい、綺麗な鎖骨だ。
この鎖骨を穿こう。心からそう思った。