上陸した途端、すべての音がGだった。
木々の揺れる音、自分の足音。
小石を落として、別の石にぶつかる音も、G音。
「この島……なんか、音がおかしくありません?」
絶対音感がない同行者でも気が付いたようだ。
「ああ、ドレミで言うと、『ソ』だね」
地図にない島が見えると司令部に連絡したのは三日前。
返ってきた「その島へ直行せよ」という命令は「その島」ではなく「ソの島」であったか。
島を探索する。鳥の声は数種類は聞こえるが、どの囀りもG音。
果物をもいでも、それをかじっても、咀嚼しても、G音。
島の奥には大きな岩穴があった。植物の蔓で出来た縄が張ってある。ここが何かしら、神聖な場所の入り口であることを示していることは明確だった。
「入りますか?」
同行者の話し方も抑揚が少なくなり、G音に近づいている。
「入ろう」
私の声もいつもより高い。「隈なく調査せよという命令だ」と続けた声は、完全に抑揚のないG音だった。
洞窟。足音が響く。水滴が落ちる。耳鳴りのような奇妙な歌が聞こえてきた。ソの島の奥へ、吸い込まれる。