その島の名称については諸説ある。
一書に曰く――。
島奥の洞穴に、地底に通ずる大穴あり。
本邦の根源一切この穴より生ずと云々、島人の伝承にあり。
故に本島、祖の島と名付く。
また一書に曰く――。
島奥の洞穴に、地底に通ずる無数の小穴あり。
雨水この小穴より漏れ、根の国を潤すと云々、島人の伝承にあり。
故に本島、粗の島と名付く。
さらに一書に曰く――。
島奥の洞穴に、地底に通ずる無数の小穴あり。粘土を掘りたる跡なり。
古人、呪いのために土人形を盛んに塑像すと云々、島人の伝承にあり。
故に本島、塑の島と名付く。
などなど、諸説紛々ではあるが、「穴」がキーワードであることは間違いない。
その謎を解くべく、熱い学究の志を胸に、問題の穴に飛び込んではみたものの、未だに穴の底にたどり着けないでいる。
落下しながらも、とりあえず論文の「はじめに」までは書き終えてしまったが、はてさて、真理に至る道未だ半ば、といったところである。