天上から、高輝度のレイヤーがするすると降りてくる。
真昼の帳だ。
ビル街のガラスは一層輝き、往来のビジネスマンの歩調も活気づいている中、ひとり、私だけが焦燥している。
多少の陽光には慣れてきたつもりだが、真昼の日差しだけはどうにもいけない。
幅狭なのは家のカーテン、幅広なのは体育館ステージの緞帳ほどか。そんな真昼の帳が、街中のそこかしこで降りてきている。
まるで詰将棋みたいだ。このままだと逃げ道を塞がれた挙げ句、炙り殺されてしまう。
私は、まだ帳の降りきっていない場所(それは大概、夜の残滓が乾ききっていない場所だ)を縫うようにして、最短距離で日陰を目指す。
死物狂いで往来をジグザク走行する私は、周囲の日向者からはさぞ奇異に見えることだろうが、そんなことを気にしている場合ではない。
幸い、手近な地下鉄入り口に転がり込むことができた。
安堵の溜息を吐きながら横を見ると、ちょうど同じようにしている学生風の女がいる。
直感的に「おや、あんたもかい?」という顔をすると、向こうも汗ばんだ微笑みで頷いてくれた。