髪を洗いながら泣く。泣く。泣く。
涙はシャワーに洗われ、シャボンとともに排水溝へと消えていく。
がぼがぼと私の涙を飲み干した排水溝に、そっと語りかける。
――どうだった?
シャワーで火照った身体とは裏腹に、心臓だけがしんと冷たい。
――最高だよ。天の美禄だ。
排水溝から立ち昇るテノールに心臓がゆるむ。
嬉しい。
さっき流したのとは別種の涙が溢れそうになるが、ぐっと堪える。こんな涙は彼の好みではない。
明日も私は地を這うようにして探すのだろう。
極上の涙の素を。
私の魂を流血させるような悲しみを。