夜半に目が覚めて、水を飲もうとキッチンに向かう。
玄関が騒がしい。まるで猫が喚いてるような声がする。
ああ、そうか。今晩は新月だった。
案の定、玄関の三和土では、月に戻りそこねた月光たちが、所在なさげに潮垂れていた。
まるで、終電を逃したサラリーマンみたいだなと思う。
いいよいいよ、明日の晩までそこに居なよ。
霧吹きで、お湿りを与えてやる。
月光たちは安心したらしく、淡い蛍光色となってそこいらに蟠った。
私はキッチンで水を飲んだあと、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードにメモを残す。
「月光の居残り組 明日のお迎えで全員かえすこと ←★次の満月までは絶対のこさない!!」