新しいゲームのダウンロードを待っているとき。
蹴り上げたボールが、中天の太陽と重なって眩しいとき。
湖底から拾い上げた翡翠石が、誰のよりも大きかったとき。
この人形には赤のほうが似合うなと気がついたとき。
引き当てた必勝のカードにそっと感謝を捧げるとき。
初めての曲を歌い上げたあと、ばくばく跳ねる心臓に冷たいウーロン茶を流し込んだとき。
あるいは、憎いあいつの頬っ面を、妄想のなかで思いっきり殴りつけるとき。
そんな何気ない瞬間、世界中のこどもたちの脳内にびびっと指令が下る。
矢も盾もたまらない。
ある者は手に入れたばかりのバイクに跨り、ある者は踵が潰れたスニーカを履いて。
またある者は、生まれて初めて体験する這い這いで。
行かなきゃ!
よくわからないけど、わかんないんだけど、新しい仲間を見つけなきゃ!
みんなが右往左往している。その様子を眺めるのが本当に楽しい。
「ママ、感度最高だよ」
ぎゅっと力をこめた掌のなかで、私のアンテナが――ママの小指が嬉しそうにぴくぴく動く。