2020年5月2日土曜日

淡く、ときには速く/立花腑楽

 繰り返し瞬きをしたときとか、手をぱたぱた降ったときとか。
 そんな些細な仕草の折に、風が生まれる。
 薄荷油をほんの数滴垂らしたような、淡い色合いの風だ。
 普段は頬や唇をさわさわ撫ぜる程度の微風だが、思いもかけず大暴風が吹くときだってある。
 それはもう、予告も前触れもない。本当に唐突に吹いてくるのだ。
 台風一過みたい。後に何ものこさない。
 鼻がすんすんするので、今回は濃い風だったのかもしれないな。
 きょとんした小憎らしい顔を眺めながら、後になってからそんなことを考える。