2020年5月16日土曜日

骨孕み/立花腑楽

 外法頭のされこうべが野晒しになっている。
 骸だらけのこの野っ原で、それにしたって際立って大きなされこうべだった。
 その無闇に大きな頭蓋には、みっちりと嬰兒が詰まっている。
 野犬に襲われる心配もない。すくすくと育っている。
 されこうべの眼窩を覗いてみると、その様子がよく分かる。
 なぁ、お前さんの父親は誰なんだい。
 かかか、とされこうべの顎が笑う。
 眼窩のなかで、嬰兒の口角がにっと引き攣る。
 そりゃあ言えないよ、何せ、やんごとなき御仁だからね。
 そう答えたのは、どちらだったのだろう。
 両眼窩に一粒づつの飴玉を放り込む。
 からりころり、虚ろの中で飴玉を転がす音がしばらく響いたかとおもうと、
 ああ、ああ、ありがたいことです。これでしばらくはややこも救われまする。
 先ほどとは全く違う声色でお礼を言われ、私はすっかり混乱してしまった。