月の物が訪れなくなってしばらく経ったある日、痛みを伴う異物を陰から引っ張り出した。骨だった。
白く小さく、そして愛おしかった。だが、どうしてよいものかわからない。わからなすぎて骨を持ったまま部屋をうろうろとし、ぽちゃんと衝動的に水槽に入れた。水槽に沈んだ骨は美しかった。ここで間違いないと思った。
それから毎月のように、骨を産んだ。ひとつ、またひとつと、水槽に骨が堆積していった。
骨を産み続けてだいぶ経つ。人体の本を見ながら、どの部位の骨かを確認するくらいの余裕もできた。産んでいないのは頭蓋骨だけになった。水槽は骨でいっぱいだ。
水槽の本来の主である海月には窮屈な思いをさせてしまっている。「これで最後だよ」と声を掛ける。海月に言ったのか、骨に言ったのか、自分でもわからない。
心なしか海月もそわそわしているように見える。さあ、最後の痛みがやってくるよ。