ミミズがのたくったような字、なんて喩えがあるけれど。
蛇の書く字は、案外達者なものだった。
文を貰ったのである。
筆墨鮮やかにしたためられた古式ゆかしい候文で、おおまかに言うと「お茶でも飲みにいらっしゃいませんか」と、そのようなことが書かれているらしかった。
さてさて、風流人士で通ったあの蛇のことだ。あの艷やかな尻尾を筆に巻きつけて、文のひとつも書くだろう。
一通りの礼儀作法にも通暁はしてるだろうし、ただ、それにしたって茶の湯というのは穏やかではない。
尻尾一本でわたわたしているうちに、つるりと茶釜に落っこちてしまうんじゃないか。
「で、ご主人は他には何か?」
文を持ってきた小僧にそう問いかけると、坊主頭をぽりぽり掻きながらこう答えた。
「はぁ、手もない身ゆえ、皆様には無作法をお目にかけるやもしれぬ。介添えなぞしていただけると助かるのだが、と」
私はわっはっはと笑ったあと、返書をしたためて小僧に持たせた。
さて、どんな着物を着ていこう。