古い板塀の間を歩く。小道の多い町だ。懐かしいような、異国のような。
地図があてにならない町だ。怖いような、楽しいような。
だが、日が傾くにつれ、不気味さが増してきた。
どうしてこんな町に来たのだろう。用事があったに違いない。何か頼まれ事があったような気もするが、忘れてしまった。
林檎が籠に増えている。行き止まりには、林檎が置いてあるのだ。それを取って、市場籠に入れて、回れ右をしてまた別の路地を行く。また林檎がある。
市場籠は、いつの間にか手に持っていた。まだ竹が青い。新品の籠だ。林檎がよく似合う。
すっかり日が暮れてしまった。市場籠が林檎でずっしりと重い。疲れた。林檎を食べてみようか、どうしようか。毒林檎ではなかろうか。
林檎をひとつ弄びながら歩く。また林檎だ。