竜が耳の裏を掻く。仕草が猫そっくりだ。
剥がれ落ちた鱗が、地に到達するより先に風にさらわれていく。
きらきらと虹色に舞うそれらの一枚一枚が、よく見てみれば飛行機なのだ。
飛行機なりに懸命に風に乗ろうとしているが、何せ出自は鱗。どうにもペラペラで心もとない。
風に翻弄される飛行機たちに、竜は特段の訓示を垂れる様子もない。
退屈げに地面に蟠ると、ふすんと大きな鼻息を吐いた。
わっと飛行機たちが舞い上がるが、それでも先程よりは確かな飛び方で行き先を目指す。
あるものは民間の飛行場へ、あるものはとある国の空軍基地へ。
竜はかつて飛んだ蒼穹の夢を見ながら、再び長い微睡みへと落ちていく。