月の兎たちは忙しいが、地上の兎たちはおおはしゃぎである。
人間もこの日は夜を待ち、空ばかり気にしており、地上の兎のことに構っていられない様子。
実在の兎も概念の兎も架空の兎も物語の兎も、日頃の鬱憤を晴らそうと駆け回り、食べ散らかす。
そんな中
「それで、ヒゴロのウップンって何なの?」
兎語を解してしまった人間の子供が訊ねたものだから、兎たちは興を削がれ、怒り狂った。そして怒りのあまり鬼となった兎がここに一匹。角を生やした兎は、名月の晩、月の兎に見守られ、毛を生やした亀を探しに行く旅に出る。