2020年8月9日日曜日

偽食家の食卓/立花腑楽

 口腔デバイスは正常に動作している。
 唾液リキッドの分泌量も適正。咬合力を制御するシリンダーも快調だ。
 もちろん味覚センサーにも有意な誤差は認められない。
 咀嚼物の成分を分析、クラウド上のデータベースと照合。
 結果はエラー。
「該当するテイスト・フレイバーが検索できません。 ⇒ 無視して続行/再試行」
 ここ最近、ずっとこんな感じだ。どうも彼女の作る料理は、私のデバイスと相性が悪い。
「無視して続行」を選択。続いて、リアクションモードを「Manual」から「Automatic」へと変更。
 私は微笑みながら「美味しいよ」と回答したが、彼女はとても不満そうな表情をする。
 かりかりと、私の演算処理に負荷がかかる。