神は腐らないし燃えない。酸にも溶けない。
だから廃棄には難儀する。
地中に埋めると土壌を汚染するし、海洋投棄など以ての外だ。国際社会から袋叩きに合う。
「実は水銀にだけは溶けるのですよ。我が国ではずっと昔からそうやって処理しているのです」
とある婆羅門が、本邦の政府高官にこっそり耳打ちをする。
廃神と水銀のアマルガム。
おかげで少しは嵩張らなくなったが、何せ神々は八百万もおわすのだ。根本解決にはなっていない。
喧々諤々の議論の結果、陸でも海でもない場所に遺棄されることとなった。
神々を溶かし込んだ水銀カプセルが、衛星軌道をぐるぐる回る。
教義を忘れ、神々の名も忘れ、それでもちりちりと身を焦がす信仰心から、人々は今夜も夜空に祈りを捧げる。