森星霜
2021年1月24日日曜日
水銀信仰/五十嵐彪太
世界から水銀が枯渇し始めるにしたがって、人々は水銀を拝み始めた。
拝んでも拝んでも水銀は減り続けた。水銀への信仰はこれまでの宗教にはない盛り上がりを見せた。
さらに水銀が減ると、今度は信者も減った。諦観か、単なる諦めか。
かつては辰砂で塗られていたという伝説の祠に、少数の熱狂的信者が集まる。
崇め奉るのは、この世にただ一本だけ残る水銀体温計である。
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