出生時はなんの変哲も無い角だった。
言葉を覚え始めたころから異常発達をはじめ、五つになるころには、すっかり異形に育ってしまった。
誰がどう見ても、それは鬼の角ではなく、鹿の角であった。
さほど珍しいことでもないらしい。鬼の因果と獣の因果は容易く混じり合う。
しかし、獣角の鬼は、他の鬼から蔑まれる。
不具の息子の行末を哀れんだ父は、悩みに悩んだ挙げ句、私の角にごりごりとヤスリをかけて、もっともらしい鬼の角をでっち上げてしまった。
内には獣の因果を宿し、まがいものの角を生やした息子に、父は常々こう言った。
「いいか、実のところな、鬼も獣も人も、さしたる違いはないのだ。お前が自身を鬼と思うなら、お前は間違いなく鬼で、そして私の息子なのだ」
しかし、父よ。父よ。何故なのだ。
雄々しい角を持った牡鹿が森を闊歩する。その姿を見ると、私は泣きたくなるほどの後ろめたさと羞恥を感じるのだ。