2022年11月27日日曜日

乗り過ごし/五十嵐彪太

  終点まで寝ていられると油断していたら、どうやら銀河鉄道に接続する電車だったらしい。車窓は星々でいっぱいだった。 宇宙? 息はできるのか? まだ夢の中なのか? もしかしたら実はもう……こんなとき人は腕をつねってみることしかできない。「痛っ!」とあちこちから声が聞こえた。
 とりあえず生きていることが確認できて、乗客に奇妙な連帯感が生まれる。「どこに行くんでしょうねえ?」「一度乗って見たかったんです、銀河鉄道」
 車掌がやってきて記念切符を配る。乗客は思い思いに眺め、触れ、そして各々、鞄や上着にポケットに仕舞う。
「ちゃんと帰れるんですか? いつ帰れるんですか?」と若者が車掌に問い詰める。それを聞いて、みな再び不安に陥る。若者は、恋人との大事な約束があるという。車掌は力強く頷くが無言だ。
 はじめは珍しかった車窓の星の景色も、だんだん代わり映えしなくなってきた頃、列車は急に速度を落とし、停車した。扉が開くと、いつもの駅だった。ホームに降りた人々は、ポケットの記念切手を取り出して矯めつ眇めつし、互いに顔を見合わせるのだった。